デスクレスSaaSとは、オフィス以外の「現場」で働く人向けのクラウド型サービスのことです。本記事では、定義やデスクワーカー向けのSaaSとの違いをご紹介します。
デスクレスSaaSは次のような特徴があります。
SaaS(サース)とはSoftware as a Serviceの略で、クラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネットを経由して利用できるサービスのことです。インターネット環境があれば、どこからでもアクセス可能で、必要なサービスを複数人で利用できます。
ノンデスクワーカーとは次のような産業で働く人を指します。
デスクレスSaaSは、デスクの前で働くのではなく、日常的に現場で働いている人に向けた製品です。現場で使用するため、パソコン以外のデバイスで使うことを想定しています。具体的には次のようなデバイスです。
ウェアラブル機器とは、手首や腕などに装着して使うコンピューターデバイスで、代表例として腕時計型のスマートウォッチが挙げられます。
IoTとは、Internet of thingsの略で、さまざまなものをインターネットに接続することを指します。IoT機器のわかりやすい例としては、インターネット経由で操作できるエアコンなどが挙げられます。
デスクレスSaaSとデスクワーカー向けのSaaSでは、次のような違いがあります。
デスクレスSaaS | デスクワーカー向けSaaS | |
---|---|---|
ユーザー | ノンデスクワーカー | デスクワーカー |
利用環境 | 現場で利用 | オフィスや自宅で利用 |
想定デバイス | 主にモバイル機器 | 主にパソコン |
現在利用中のもの | 紙中心 | エクセルなど |
デスクワーカー向けSaaSとの違いで注目したいのは、ノンデスクワーカーの業務は、細かく煩雑な業務が多く現在も紙中心で進められているという点です。デスクレスSaaSは細かくシステム化しにくい業務において「紙での業務より楽」と思えるものでなければ、現場での実用に向かないので注意が必要です。
近年、デスクレスSaaSが注目されている理由には次のような点が挙げられます。
独立行政法人労働政策研究・研修機構によると、デスクレスSaaSの利用者となるノンデスクワーカーの比率は、日本の就業人口の約60%*です。一般的なSaaSよりも市場は大きい上、DX推進の高まりによりさまざまな業種で従来の方法よりも効率の良い業務フローを探しています。
また、第一次産業を中心に労働人口の減少が問題となっています。デスクレスSaaSを使うことで業務効率化を実現し、労働力の減少に対応したいと考えている人が多い点もポイントです。
これまでオフィスワーカー向けに作られたSaaSは、パソコンで使うことを前提で作られており、ノンデスクワーカーの存在を意識することはほとんどありませんでした。そのため、現場はいまだに紙のマニュアルやチェックリストを使って業務を進めていることが多かったのです。そんなまだ手付かずのデスクレスSaaS市場をチャンスとしている企業が増えてきているため、昨今では注目を浴びています。
今までデスクレスSaaS市場が手付かずだった理由には、現場の受け入れ体制が整っていなかったことも関わっています。以前はインターネットにつながる機器といえばパソコンで、移動や立ち仕事の多い現場では使いにくかった上、事務所等にあるパソコンの数も限られていました。
しかし、近年ではほとんどの人がプライベートでスマートフォンを使用しており、インターネットが身近なものになっています。業務用のスマートフォンやタブレットなどが普及しており、パソコン以外のモバイル機器の受け入れ体制は以前に比べて整ってきています。
ノンデスクワーカーがデスクレスSaaSを導入した場合、次のようなメリットがあります。
ノンデスクワーカーは主に紙を使って業務を行っていますが、全体を取りまとめたり他の部署とのデータ共有にはパソコンを使っている場合が多いです。そのため、現場で紙にメモをして、事務所に戻ってからパソコンに入力するという業務があります。
デスクレスSaaSの場合、モバイル機器を使って現場からシステムへ直接入力できるようになるので、パソコンのある事務所へ移動する時間と、紙からの転記作業の時間がなくなるため、業務効率化が図れます。
データの収集や管理については、紙での管理からデスクレスSaaSに変更することで、以下のようなメリットがあります。
フォーマットの規定がないと、人によって報告内容に差が出てしまいます。しかし、デスクレスSaaSを使って同一フォーマットを使った報告にすることで、属人化を防ぎ報告内容の標準化を図ることができます。また、選択肢を選ぶ入力形式を活用することで同一の登録項目で情報が蓄積されるため、傾向分析も行いやすくなります。
情報の管理面では、デジタルデータは紙よりも検索しやすく、必要な情報をすぐに検索できるのがメリットです。
フォーマットに沿って入力することで、記入漏れなどの人為的ミスが防げます。また、情報の共有がリアルタイムで行えるようになるので、作業工程の途中で問題が見つかり、前段階に戻る手戻りを防止することもできます。
デスクレスSaaSという言葉に馴染みがない人もいると思いますが、現状はどのようなサービスがあるのかご紹介します。
デスクレスSaaSは現在「浸透し始めている」という状況です。特に次のようなサービスが海外や日本で広がりつつあります。
Platio | 自社業務に合ったモバイルアプリを作成・活用できる |
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カミナシ | ペーパーレスに焦点を当てて現場向けモバイルアプリを作成・活用できる |
iAuditor | 安全性と品質の管理を簡素化する安全検査アプリを作成・活用できる |
より簡単な操作で業務を進めていけるデスクレスSaaSが使いやすく受け入れられています。また、今後は研修などをしなくても直感的に使えるものや、手がふさがっていても声だけで操作できるようなものが普及する可能性があります。
実際にデスクレスSaaSの導入を検討する際、どのような観点でサービスを選ぶと良いのかご紹介します。
現場目線で開発した上で、業務で使いながら仕様を変更できるものがおすすめです。
現場目線で開発するには、現場の人の意見を取り入れる必要があります。そこでおすすめしたいのがノーコード開発です。システムを開発する際、通常はプログラミングコードを書きますが、ノーコード開発はプログラミング不要なため現場担当者が自ら機能を組み合わせて自社に合ったシステムを作成することが可能です。
また、移動が多いノンデスクワーカーには、スマートフォンがあればいつでもどこでも使えるモバイルアプリが適しています。ノーコードでアプリを開発する場合、エンジニアに頼ることなくユーザーが現場の運用に合わせて機能を柔軟に変更できるのもメリットです。
デスクレスSaaSを初めて導入する企業も多いことでしょう。導入前後の疑問を解消してくれるサポートや、実際に使ってみて不便がないのかを試すことができる無料トライアルがあるサービスがおすすめです。
デスクレスSaaSのPlatio(プラティオ)を使って、実際に業務アプリを作成、活用した事例をご紹介します。
素材、部品、機器、サービスなど幅広い事業の開発、製造、販売、物流まで展開している京セラ株式会社では、毎日の物流倉庫の在庫の棚卸しを紙のリストを使って行っていました。リストの受け渡しのために巨大な倉庫を移動する必要があり、目視でチェックしていたため時間がかかっている点が課題でした。また、目視でのチェックでは人為的ミスも発生してしまいます。
そこでPlatioで棚卸しアプリを作成し、在庫を確認して現場から報告できるようにした結果、紙のリストの受け渡しの手間と時間が省けました。また、アプリに従って操作していくことで、人為的ミスも削減できました。
この事例についての詳細はこちらのページをご確認ください。
岡山県を中心に設備や土木関連の事業を展開している東備建設株式会社では、始業前に毎日重機の点検が義務付けられています。点検用紙は重機ごとに管理され、月に1回、全ての用紙を回収して状況確認を行っていました。
その際、用紙を回収するまで点検状況の把握ができずに記入漏れの対応ができないという点や、用紙の回収業務や紛失しないように管理する必要がありました。
そこで、Platioで点検アプリを作成したことで、リアルタイムで点検報告が可能になり、改修の手間を削減しました。アプリに沿って点検をすることで、入力漏れを防ぐほか、紛失などのリスクもなくなりました。
この事例についての詳細はこちらのページをご確認ください。
大型家電や家具の発送をしている株式会社コネクストは、入荷した商品を保管せずにすぐに出荷する通貨型物流センターの立ち上げを考えていました。その際、紙を利用した出荷管理では迅速な情報共有やデータ活用が難しいため、業務のデジタル化が必要でした。開発のコストを抑えつつ、現場で使いやすいモバイルアプリを作れないか検討した結果、Platioの導入に至りました。
Platioで作成した入出荷管理アプリでは、スマートフォンを利用して入荷報告をすると、その場で出荷ラベルの作成・印刷までスマートフォンで対応できるようにしました。出荷の報告はラベルのQRコードを読み取るだけで完了するため、工数と時間の削減につながっています。
この事例についての詳細はこちらのページをご確認ください。
現場ではいまだに紙での運用が多く、業務が煩雑化している、標準化されていないという現実があります。そんな中でデスクレスSaaSをうまく活用することが出来れば、より業務の効率化を図ることが可能になります。そのためには自社の業務に合ったサービスを選ぶこと、現場で使いやすいことが何よりも重要です。
Platioはノーコードで部品を組み立てるようにアプリを作ることができるため、現場の意見が反映しやすく、仕様の変更もしやすいため、手軽に現場に合った業務用アプリを作成できます。
製造・物流・宿泊サービスなど様々な業界の「現場」で使われているPlatioの事例を参考に業務効率化を進めてみてはいかがでしょうか。
Platioの詳細やノーコードで業務をデジタル化する方法については、こちらのページで詳しく紹介しています。
時間のかかる現場の管理業務。モバイルアプリの活用による「現場のDX」推進をマンガでわかりやすく解説します。