ノーコードツール紹介シリーズの3回目をお送りいたします。AppSheet、Honeycodeに続いて今回はAdalo(アダロ)というノーコードツールを使ってみました。洗練されたデザインのアプリが簡単に作れるということで、最近日本でも人気が高まっているという噂ですが、はたしてどんなツールなのでしょうか?
Adaloは、2018年に登場したアメリカ発のノーコードツールです。Platioや、以前ご紹介したAppSheet、Honeycodeと同じくプログラミングは不要、ドラッグアンドドロップでパーツをはめ込んでいくようにして簡単にアプリを作成できるプラットフォームになっています。
また、すべてクラウドで利用でき、環境の構築、準備も不要です。PCとブラウザさえあればすぐにアプリを作り始められますので、サーバーやデータベースを用意する必要もありません。
Adaloの最大の特徴としては、通常の「Webアプリ」に加えて「プログレッシブWebアプリ」(詳細は後述します)さらに、「ネイティブアプリ」(Google PlayやApp Storeのようなアプリケーションストア経由で配信しインストールするアプリ)を作れることです。ここが今まで紹介したAppSheetやHoneycodeとやや異なる部分です。ストアで配信できますので、社内向けアプリだけではなくコンシューマー向けのアプリもリリースできるということです。現にAdaloを使って作られたアプリがいくつも公開されています。
Adaloには3種類の料金プランがあります。
Free | 0/月 |
---|---|
Pro | $50/月 |
Business | $200/月 |
(2021年1月現在)
無料プランでも作成できるアプリの数に制限はありませんが、データが最大50レコードまでしか登録できません。また、ネイティブアプリは有料プランを契約しないとリリースできません。無料プランはパイロット運用的な使い方に限られ、本格的に展開するのなら課金が必要という印象です。
前述したようにAdaloでは「プログレッシブWebアプリ」というアプリを作成できます。以下、PWAと略して記載します。
PWAとは何かというと、スマホのネイティブアプリに近いWebアプリ、というものです。通常のWebアプリはSafariやChromeといったWebブラウザの中で動作しますが、PWAの場合そうではなく、独自アイコンから起動し、URLの書かれたツールバーなども出てこないので、画面表示がまるでネイティブアプリのようです。
ほかにもPWAでは、オフライン動作、ポップアップ通知などネイティブアプリに近い機能も使えるようですが、しかし、これらが動作するかどうかは機種やOSなどの環境に左右されるようです。
ここからはAdaloを触ってみることにしましょう。まずはAdaloのテンプレートをそのまま使って、アプリ作成から使用するまでの流れを確認してみることにしました。
新規アプリ作成に際して、最初に3ステップのダイアログが出てきます。特にこの1ステップ目が大変重要な選択肢になりますので注意が必要です。
Native Mobile AppとDesktop Web Appの二つのうち、どちらかを選びます。それぞれの違いは以下の通りです。
Native Mobile App | ネイティブアプリを作る。PWAが生成される。 単独のアプリとして動作する。 PCのブラウザサイズにフィットしない。 |
---|---|
Desktop Web App | Webアプリを作る。PWAは生成されない。 ブラウザ内で動作する。ページ毎にURL共有できる。 PCのブラウザサイズにフィットする。 |
結論からいうと、モバイルからメインで利用するのであれば料金プランにかかわらずNative Mobile Appを選んだ方がよいでしょう。無償プランだとネイティブアプリをリリースすることはできませんがPWAは使えますので、決められた範囲で共有するには支障はありません。
7種類あるテンプレートのうち、今回はChatを選んでみました。
これはあとから変更可能な項目です。デフォルトの色調で充分オシャレなのがAdaloの魅力です。
以上3ステップが終わると、チュートリアル動画が出てきて、「Adaloの大事な三要素」を教えられます。これは覚えておいた方がいいと思います。Adaloは動画のチュートリアルが充実しており、とても分かりやすいです。(言語は英語になります)
Adaloの三要素(これらの組み合わせでアプリを作っていきます)
コンポーネント | 画面内の各パーツのこと。ドラッグアンドドロップで配置できる。 |
---|---|
データベース | アプリが保持するデータ群。各テーブルは「コレクション」と呼ばれる。 |
アクション | ボタンを押したときの挙動、画面遷移を設定する。 |
Adaloの開発画面は、各スクリーンの遷移図が大きく右側に表示され、データやアクションを設定するツールが左側に小さくまとまっているのが特徴です。パレットの絵の具からキャンバスに色を塗っていくような感覚といえるでしょうか。画面遷移図は、自在に拡大縮小させられます。
上部のメニューから簡単にアプリ動作をプレビューできるうえ、動作環境としてスマホの色々な機種がシミュレートできるのも便利です。
Adaloは自動保存になるので、特に保存ボタンなどは見当たりません。画面上のSHAREというところを押すとQRコードが表示されるので、それをスマホから読み取ればもうアプリを使うことができます。
とりあえずテンプレートのままチャットアプリを起動して使用してみました。PWAアプリなので、最初にアプリのアイコンをホーム画面に追加する手順が必要になります。
ユーザー登録し、チャットが送られることを確認できました。アプリの動作速度が僅かだが遅く感じられる時がありました。不具合ではないと思いますが、やや気になりました。
では、続いてテンプレートに手を加えてオリジナルのアプリにしてみましょう。
AdaloにはAppointmentsというテンプレートがあり、個人レッスンの予約管理ができるアプリになっています。これを社内向け業務アプリとしてカスタマイズし、社内研修・トレーニングのスケジュール登録と受講登録アプリにしてみました。
カスタマイズした項目および作成にかかった時間をまとめると以下の通りです。
項目 | カスタマイズ内容 | 時間 |
---|---|---|
入力項目ラベルやメッセージの変更 | 英語→日本語化 | ― (途中で挫折※) |
「Meeting Room」データコレクションの追加 | 新規データコレクション作成 プロパティとレコードの登録 画面フィールドへの項目追加 |
20分 |
研修レベルを★表示 | コンポーネントのダウンロードと追加 コンポーネントとコレクションの紐付け |
10分 |
Welcome Pageの追加 | 新規スクリーンの作成 既存スクリーンからのアクション(リンク)作成 |
5分 |
簡単ではありますが、コンポーネント、データ、アクションの基本三要素をひと通り盛り込んだカスタマイズ内容です。もしコードを書いていたら膨大な手間が発生したであろう作業も30分足らずで仕上がるのは、ノーコードの真骨頂だと感じました。
Adaloは、とにかく操作が直感的です。ドラッグ&ドロップ、マウス操作によって、まるで「パズル感覚」で仕上がっていきます。途中で「ここはどうするのだろう?」と分からなくなったときも、「多分ここをこうするのかな?」という、勘に頼った操作で何とかなってしまうことがあり、驚いたほどです。
データベース(コレクション)の作成、レコード追加という専門的で難易度が高そうな作業も、選択式が中心の非常に分かりやすい操作で組み立てられ、数式などの入力は不要でした。本当に初心者でもアプリを作れる仕組みになっていると感心しました。ただし、メニューなどが全て英語のため、若干の英語力は必要でしょうか。
※画面の表記が英語なのを日本語に変更する作業が挫折したのには理由があります。Adaloは2021年1月現在、日本語には非対応で、アプリ使用時における日本語のデータ入力は問題ないものの、アプリ作成時のパーツに日本語を入力しようとすると文字化けしてしまい、うまく入りません。対応策としては、他のエディタなどからコピペで転記するという方法しかないのですが、あまりにも面倒だったので途中でやめてしまいました。もし完全に日本語表示のアプリを作ろうとする場合は、通常より作成に手間がかかるでしょう。
Platio(プラティオ)は社内で利用する業務用のモバイルアプリを作成するツールなのに対し、Adaloは社内に限らず社外向けも含むWEBアプリ作成ツールのため、性質の違いはあるものの、両者について比較してみることにしましょう。
「ひと目を惹きつけるデザイン」という点でみれば、Adaloに軍配が上がります。隅々までセンスが良く華やかで、オシャレです。さすがネイティブアプリでのリリースに対応しているだけあります。
一方、「機能的なデザイン」ということでいうとPlatioも負けてはいません。業務利用に特化しているPlatioは、情報を的確に共有するというシンプルな構成になっています。作業するときに一番使いやすい画面レイアウトにカスタマイズできるのも特長です。
これはPlatioの勝ちといえるでしょう。ビジネスにすぐに使えるテンプレートが100種以上もそろっているPlatioに比べると、Adaloのテンプレートは数が少なく、それも「カップルの過去のデートを管理する」など、ユーモアはあるのですが現実的な用途としては疑問符がつくものもあります。
どちらも開発しやすいので、甲乙がつけられません。Adaloは前述した美しいデザイン性と、シンプルな構造かつ直感的なパーツ配置でバラエティに富んだアプリ作成ができる点が魅力です。反面、アプリが複雑になると属人化しやすく、メンテナンスが困難になりそうです。
対してPlatioの画面遷移は、一覧、入力、閲覧という3タイプに絞られているので、作成者以外の人が見てもアプリの構造を理解して修正することが容易です。
今回はノーコードツールAdaloを紹介いたしました。過去に取り上げた2種類と比較しても、Adaloは最も操作が理解しやすく作りやすいツールだったといえます。スプレッドシートをアプリ化するというパターンではなく、直感的に画面を並べていく方式なので、アイディアをすぐに形にしやすいと感じました。ネイティブアプリのリリースができるゆえ、Adaloは全体としてコンシューマー向けを意識したカジュアルな印象ですが、PWAで共有することが可能なので、組織内で役立つモバイルアプリを作ることも充分可能でしょう。まずは触って体験してみてはいかがでしょうか?