この記事では、スマートファクトリー化の概要やその目的などについて解説します。また、スマートファクトリー化することで発生する課題について事例を踏まえてご紹介し、そのような課題を解決するためのポイントも取り上げています。製造現場の生産性向上や業務効率化を目指している方はぜひ参考にしてください。
スマートファクトリーとは、モノのインターネットであるIoTやAI(人工知能)、ビッグデータといったさまざまな最新技術を活用することで業務プロセスを自動化・効率化し、工場の生産性向上を図ろうとする概念のことです。
また、スマートファクトリー化とは、スマートファクトリーが導入された状態を指します。もともとは、工場に機械を導入することで業務効率化につなげているケースが一般的でしたが、現在では、工場内のさまざまなデータを収集・分析することで製造プロセス全体の効率化を図るケースが多くなっています。また、スマートファクトリー化を実現し、そこから新製品やビジネスモデルの創出に取り組むケースも見られます。
少子高齢化によって労働人口の減少が課題となっている中で、スマートファクトリー化の実現は、解決策の1つとなるでしょう。
次章では、スマートファクトリー化の目的とメリットについて解説します。
スマートファクトリー化を行う目的には、以下の7つがあります。
品質の向上 | 不良率やばらつきの低減や品質の安定化など |
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コストの削減 | 材料の削減、リソースの削減など |
生産性の向上 | 設備やヒトの稼働率の向上、作業効率化、負担軽減など |
製品化・量産化の期間短縮 | 製品の開発・設計の⾃動化、仕様変更への対応の迅速化など |
⼈材不⾜・育成への対応 | 多様な⼈材活⽤、技能の継承など |
新たな付加価値の提供・提供価値の向上 | 多⽤なニーズへの対応⼒の向上、提供可能な加⼯技術の拡大など |
リスク管理の強化 | 加工や組み立て、出荷等のデータの蓄積による、製品ごとの品質証明など |
上記のような目的のもとスマートファクトリー化に取り組むこととなりますが、スマートファクトリー化を実現した後も、製造現場の課題として一部のアナログ業務が残ってしまうことが挙げられます。続いて、この残るアナログ業務について解説します。
製造現場の場合、報告のために工場と事務所間を移動することや、紙や口頭による業務を行なっているケースは少なくありません。アナログ業務が残るシーンとどのようなデメリットがあるのかご紹介します。
チョコ停とは、装置トラブルなどによって生産が短時間停止してしまうことです。いくら短時間の停止とはいっても生産に遅れが生じるため、納期に影響する可能性があります。チョコ停が起きた際には原因を速やかに明白にし、報告・共有する必要があるため、現場の負担も大きくなります。また、原因を調べる作業や報告書の作成が紙で行われるケースもあり、アナログ業務になりやすい現実があります。
チョコ停の原因や対策方法などについては以下の記事で詳しく解説しています。
ヒヤリハットとは、仕事をしている最中に危険なことが起こったものの、災害や大事には至らなかった事例のことです。工場の場合、危険を伴う工程や作業が多く、ヒヤリハットが起こりやすい環境だといえます。ヒヤリハットを起こさないためには原因を明らかにし、防止策を立てることが欠かせません。原因を明らかにする際に報告書を作成しますが、こちらもチョコ停同様に紙で作成するケースが多くなっており、アナログ業務が多くなっているのが現状です。このように工場の場合、各種報告が紙で行われていることで負担が大きくなっており、報告業務が進まず、現場からのヒヤリハット報告件数が少ないといった課題も生じています。
ヒヤリハット報告書の重要性や書き方などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
また、ヒヤリハット報告を効率化する手段については以下の記事で詳しく解説しています。
以下では、実際にヒヤリハット報告を効率化させた事例をご紹介しています。
製造現場では、ベテラン社員から若手社員への技術継承が行われることもありますが、口頭ベース、手書きのメモベースで行われているケースも少なくありません。このような伝達だと、ノウハウの共有に抜け漏れが生じ、非効率だといえます。
エクセルやワードなどに写真や動画を添付して引継書を作成しているケースもありますが、そのような場合でも写真や動画を添付するために、データの抽出や貼り付け作業といった手間が発生してしまいます。
技術継承の重要性や方法については以下をご覧ください。
また、技術承継を効率化した事例について以下のような事例があります。合わせてご覧ください。
この他にも、製造現場では工場日報、生産実績報告、棚卸報告、設備点検、出荷前点検、清掃報告などさまざまな報告業務があり、アナログで行っていると多くの無駄が発生しているのが現状です。
アナログ業務では報告にタイムラグが生じるため、円滑な情報共有ができず、業務の効率化に支障が出てしまいます。また、手書き書類は改ざんが発生する可能性があるだけでなく、携帯性や情報の検索性が低い点もデメリットです。その他にも、手書き書類の内容をデータ入力し印刷したりする手間がかかり、人的リソースや印刷代などさまざまな無駄が発生する点にも注意しなければなりません。
このような点を踏まえると、製造現場におけるアナログ業務のデジタル化は必要不可欠です。
アナログ業務のデメリットなどについては以下の記事で詳しく解説しています。
また、製造業におけるデジタル化の課題やデジタル化の具体例などについては、以下の記事で詳しく解説します。
次章では、ここまで紹介したようなアナログ業務の課題をデジタル化することで解決する方法を解説します。
デジタル化を進めるためのよくある施策として、紙の業務をExcelに切り替えることや、市販されている既存のパッケージシステムを導入する選択肢があります。しかし、Excelだと情報を手作業で集計・集約し、別システムに転記してからまとめ直すといった情報管理の手間が増えたり、個々人のPC上でファイル管理されるようなブラックボックス化の恐れがあります。また、市販のパッケージシステムを利用する場合、自社の業務に合わず、機能の追加やカスタマイズに多大な手間やコストがかかるケースもあります。
そこで製造現場におすすめなのが自社の業務に適したモバイルアプリの活用です。
現場では立ち仕事も多く、PCを常に触れられる環境とは限りません。したがって、普段から身に着けているスマートフォンやモバイルデバイスなどで、気軽に利用できるモバイルアプリが活躍します。業務用モバイルアプリはWebを活用するサービスとは異なり、工場内の通信環境が悪い場所でも問題なく動作し、その場で報告を完結できるため、どんな現場でも利用可能です。
モバイルデバイスに特化した操作性は、現場での入力や閲覧が容易であり、スマートフォンの機能を用いて、写真や動画、位置情報などもその場で報告に添付することができます。アナログ業務の課題としてあった口頭ベースでの説明と比べて、モバイルアプリなら写真や動画にて現場の様子を文章よりもわかりやすく伝えることができるため、現場の状況などを素早く把握でき、ノウハウもためることもできるでしょう。
業務用のモバイル開発に際しては、自社に合ったアプリを1から作成するのはハードルが高いため、プログラムを作成することなく、あらかじめ用意された機能を組み合わせるだけで業務用のモバイルアプリ開発が可能なノーコードツールの活用がおすすめです。アプリ作成後も自社の業務・運用にあわせて簡単に改善できるかも重要なポイントとなります。
以下の資料では、アナログ業務のデジタル化に役立つモバイルアプリの重要性やモバイルアプリ開発に向けた最適解について詳しく解説しています。また、実際に製造現場にてモバイルアプリを作成し、現場業務を効率化した事例もご紹介しています。興味のある方はぜひご覧ください。
現場にはいまだに「紙」や「Excel」が業務ツールの中心として残っており、その環境を打開していくことが急務となっています。本資料では、現場に必要な環境づくりの勘所について触れながら、デジタル化によって現場業務の改善を図っていくための強力なツールとしてのモバイルアプリの重要性についてご紹介します。